*******山形にいたころ*******
二匹はとてもいいコンビ。
ちょっとでかけて帰ってくると、二匹はたいてい、玄関の前でセットになって待っていた。対で並んでいると、狛犬ならぬ、狛猫のようだ。
きみたちの関係は、黒猫のプリンのほうが、母性的で、マロンは弟分。いつもプリンは、マロンのことを気にかけていて、近所のボス的なアメショー猫とマロンが縄張り争いですさまじい声をあげていると、耳を立て、すぐに様子を見に行く。そしてマロンがケガをしてすごすごと戻ってきたときには、傷を舐めてやる。マロンはマロンで、プリンがオス猫に追いかけられているのを知ると、すかさず飛んで行き、プリンを守ろうとする。なんか、人間よりもよっぽどすごい気がしてくるんだよね、君たちをみていると。
私はそんな猫たちを横目に、少しずつ庭づくりに取り組む毎日。まず、庭のシンボルツリーになる大きめの木を植えてもらい、それから、芝生やレンガを敷いていった。道路から玄関までの道のレンガは業者に頼んだが、リビング前のところは見様見真似で自分で敷いた。猫たちがくつろげるデッキをつくるためだ。
まずはシンボルツリーを植えてみた。コメツガという木。北国のクリスマスツリーのイメージだ。
東側の隅には、畑を作った。トマトやキュウリ、インゲンなど、なかなかの収穫。猫は畑の畝の間に寝るのが好き。
山形の夏は暑い。空気が澄んでいるから、たちまち、肌がじりじりと焼けてくる。汗だくになっている私と夫のまわりで、猫たちも遊ぶ。そんなときに、「いたかあい」と声をかけて庭に入ってくるジャランのおじさんは、「焦るこたあないよう、冬になれば草は枯れるし、春になりゃあ、雪も融けるよう」と笑う。
猫とウサギ
ようやく庭は恰好がついてきたけれど、どれほど手間をかけても、あまり人が訪ねてこない庭は、なんだかうらさびしいものだった。猫がいなかったなら、ただ形を整えたというだけで、とても空虚な庭になっていたことだろう。
何年かすると、コメツガはこんな大木に育った。すっかりおとなになった猫たちは、庭のあちこちに居場所をみつけては昼寝をする。猫たちのほんわかした姿を眺めては、ちょっとしあわせな気分になった。