満月の日

秋が近いのに、暑い日が続いている。だけど、月は秋だ。心も秋だ。秋が近くなってくると、なんとはなしに、いろいろなことを思いだすのは年のせいだろうか。春にくらべると、追い立てられているような感覚はなく、時間がゆっくりと過ぎていく気がする。

池のカモたちも夕涼み

だけど、ぶりかえした暑さは、半端ではない。池のそばの温度計は、夕方なのにまだ30度だった。暑さを避け、日が落ちてから出てきた人たちもみんな、汗だくで歩いていた。

日本庭園の前で餌を待っている猫

坂の途中に咲いている花。秋が近くなると、可憐な花をつける。胸のあいだを流れる汗の不快感が、少しやわらぐ気がする。

汗をふきふき、上までたどりつくと、猫たち、寄ってくるが、餌をたべるとすぐにまたごろんとする。暑さが相当にこたえているようだ。あれほど木登りをしていたチビも、このごろはとにかく横になっている。


それでも丘の上は、下にくらべれば風が通って涼しい。きょうの富士山は、少し雲がかかっていたが、美しかった。

遠くの富士をながめながら、ひさしぶりに神聖な気持になった。暑い暑いと言っては、だらだらと過ごしていた日々に、区切りをつけたくなってくる。夏という季節は、きっと、人々を暑さでぼうっとさせて、心も休ませてくれようとしているのかもしれない。


チビとまる子に餌をやりおえ、私が富士の方角を眺めるころ、いつも展望台にのぼってくるワンコと飼い主さんの姿を、このごろみなくなった。ごほうびに、飼い主さんから、おやつをもらっていたワンコ。帰りの坂道をくだるとき、小さな体で走っておりて行く姿が、出会う人たちに人気だった。姿を見なくなってから、もう10日ほどになるだろうか。そういえば、毎日、坂の途中で会ったイケメンおじさんにも、このごろ会わなくなった。柔和な顔でよく冗談を言っていた人。丘の上に行けばきっと会えたはずの情景が、いっぺんに二つも消えてしまった。つぎの満月までに、みんな戻っておいで。と、そう願う。

明りがともりだした町は、そろそろ夕食の時間だ。薄暗くなった坂道を急いだ。こんなとき、前を走って行くあのワンコちゃんがいてくれたなら、きっと楽しいのにな。