ナツメ姐さん

【大船観音】               (写真はKさん)

ナツメ姐さんは、大阪時代の友達。ちょっと派手めで私よりもだいぶ上。でも、みかけは私よりも若い。それがちょっと、というか、かなりくやしい。姐さんは、年賀状でも、私はよく若く見られるんだと自慢している。

センスがいいから、婆ちゃんなどとはとても呼べないが、実は、孫が4人もいる。一人暮らしで、一緒には住んでいないけれど。

その、ナツメ姐さんからひさしぶりに電話があった。このごろ、女性差別だのなんだのと騒ぐのは、なんだかしっくりこないという。

今時そんなことを口にしたら袋だたきにあって、大変なことになるよ、と私が言ったら、なに言ってんの、あのMさんだって家に帰りゃ、えらいおとなしいっていうじゃないのさ。

と、たちまち切り返してくる。たしかにそんなに悪い人にはみえないよね、と私はたじたじ。でもさあ、これは一般社会のことだからと説明するのだが、姐さんは、

男はな、アホやからな、結局女の腹から生まれたんやからな、女には叶わんのよ。そやけどな、それを認めたがらんのも男。だから、ええかっこみせたろう思うてな、ああなるんとちゃうかねえ・・・。

姐さんのいうことを聞きながら私もすかさず、でもな、そうやってな、私ら女がずうっと腹のなかで思って、外に出さなかったから、こんな国になったともいえるんじゃないの、と世間をフォローする。

出さなかったんやなくて、出せへんかったんや。それにしても騒ぎすぎやろう。あの人はまあ退いてくれたけど、蔭でわろうてる人らもいっぱいいるんとちゃうか? 

なつめ姐さんの勢いは止まらず、それで私もつい、そっちに流される。

そやろなあ。けど、なんでもかんでも嫁はんのいいなりの男ちゅうのもまた、情けないもんよねえ。少しはかっこつけてほしいと思うけど、そういうのも口に出したら、女性蔑視になるのかしらん。

姐さんが怒ると剣幕がすごいので、つい弱気になる。

そら、あんた、親の育て方がまちごうてたんとちがうんか? いまどきはちいとよその子に注意したっても、親からきつう睨まれるし。変なのがはびこるはずやわ。たちの悪い草みたいにな。なんぼ引いても、また出てきよる。

あたしもな、まちがいだらけだったなあと、ときどきそう思うのよ。まちがい探しはもうやめよ、と決めてたんだけど。ときどき古傷が傷むのよ。と、私はしだいにしょんぼりしてくる。

浪花節だよ、人生は。ってかい。カラオケであんた、そういえばよう歌っててはったなあ。

なんもかんも気づくのが遅すぎるんよ。つくづく、とろい。こんなアホ、まわりにおらん。やっぱり、これ、浪花節やな。

アカン、アカン。そんなしみったれたことばっかり考えてるから、老けるんよ。あたしなんか、2回も結婚して2回も離婚してからに、今は気楽な一人暮らし。取り返しがつくもなにも、とにかくそうするしかなかったんやし。それでええんや、それで。

こうして喋れて笑えることがありがたい! でしょ。姐さんの口癖やったもんな。

そうそう、男も女も洒落っ気を忘れたらあかん。じきにいぎたなくなる。みかけだけやのうて、気持もいぎたなくなる。だから弱いもんに当たりたくなるんや。

そういえばあたし、このごろすっかり洒落っ気忘れてたわ。と、私はあいかわらずナツメ姐さんの説教に納得している。ああまた今回も負けたわ、と思いつつ。

でもな、年を取るのも悪くないなあと思うこともあるでえ。白内障が進むとな、なんもかんもパステルカラーにみえてくるんよ。頭のほうかてな、いやなこともすぐに忘れてまう

姐さんの言葉に、姐さん、白内障は手術せなあかんで、とさとす。たしかに、昔ほど、いろんなことが気にならなくなったのは助かるなあ。年の功ってやつかな

あんた、それ、そんなとこに使う言葉とちがうで。ほなまた、さいなら、と、いつものように、ナツメ姐さんは言いたいことだけ言って電話を切った。

そういえば、姐さんのところにいたあの年寄りのアカトラ猫どうしてる、と訊くの、忘れたなあ。かわいらしい猫だったけど。

さっそく、美容院に行って髪切ってこよう! ナツメ姐さんに見られたら、ヤマンバみたいになってるでえ、といわれそうだ。

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