迷い

池のカモの数がずいぶんふえてきた。

なにか大事なことを決断しなくてはならないとき、進むのか、とどまるのか、私はどっちかというと、とどまる方だ。私の場合は、だいたい答が出せない時は疲れている時。でも、今度は少しちがった。

ヒメ、夕涼み。オッドアイが遠目にもわかるかな?

左眼がきれいなブルー

坂道にいた玉虫。玉虫色ってここからきてるのがわかる。

9月にきまっていた鼻の手術をずっと迷っていたが、キャンセルし、ほかの病院を紹介してもらった。また検査からやり直しだ。面倒だし、手術も遅くなるのに、どうしても今の気持のまま手術室に入ることにためらいがあった。うまく説明できない、勘のようなものだ。

今日の富士は、雪のようにもみえる傘雲をかぶり、刻々と変わった。このあいだまで、私の気持も刻々と変わっていた。このまま手術を受けて早くすっきりしたいと気持と、いや、ちゃんと納得してからのほうがいいという気持。鼻前庭膿胞という、めずらしい病気だそうで、先生もあまり経験がないらしい。術後、痺れや痛みが残るし、再発もあるそうだ。

先生に悪い印象を持っていたわけではないが、初めの診察の時、「あとどれくらい生きるかって考えるとね」という切り出しにぎょっとした。

よく聞くと、平均寿命の話だった。あなたは若い人のように、あと何十年も生きるわけではないのだから、このまま我慢をすることも一つの方法だという話。えっ、それって、あなたはトシなんだから、多少の顔の変化などべつにいいでしょ、というわけかい? と、つい僻んだ。   

だが、しこりが大きくなると、骨を浸潤するらしい。それで取ることにしたのだが、なにか、気持がうまく前に進まなかった。しこりが少しずつ大きくなっているのが気になるが、さんざん迷った末に、自分の気持に正直になることにした。

空には、オニヤンマに変わって赤とんぼがいっぱい。雨が続いて蒸し暑い。それでも夕暮れが近づくと、ひんやりした風が吹いてくる。

左の小鼻の根元あたりにしこりがあることに気づいたのが4月ごろ。初めて行った耳鼻咽喉科の病院では荒療治をされて、あまりの痛さに気を失い、それからまたすがるような気持で二つも病院を回り、結局は、今の病院にたどりついたのだった。気づけば、もう、赤トンボが舞う季節になっているではないか。落ち込んだときに救いになったのは、チビまる子の存在と、丘ダチとのなにげないお喋りだ。

この虫のように、テンパっていた日々も少し落ち着いてきた。今度の病院は遠いが、決断して進んだのはよかったと思っている。今度こそ、取るぞ、という感じ。

日暮れが早くなり、丘の上に長居をしていると、坂道を降りるころには暗くなる。突然に友人を亡くしたという人にひさしぶりに出会った。歩いているのをみてほっとした。歩くためには、どうしたって前を向かなきゃなんないもんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

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