10月のバラ

10月も半ばを過ぎ、新しいカレンダーがあちこちに並びはじめた。今年は落ち着かない日々だったから、来年は、もう少し落ち着きたい。台風も、もうあまりこないでほしいものだ。テレビの画面から伝わってくる被災者たちの落胆は、他人ごとではない。

買い物にでかけたついでに、小さな癒しを探しに、ときどき立ち寄るバラ園で道草をした。

夏の暑さに弱り切っていたバラは、だいぶ活力を取り戻していた。なにより、広々と開けている風景がいい。あたりに漂うバラの匂いに癒される。先日の台風にもめげずに咲いていた。

クイーンエリザベス

バラ園に寄るときは、たいてい、大型スーパーに行く時だ。きょうは、入院の準備をするためにパジャマなどを買い求めに行った。すると、入り口あたりで、レゴのジオラマが展示されていた。

これ、すべて、小さなレゴのパーツで組み立ててある。感嘆である。

そして、買い物のあとは、すぐ近くの蓬莱橋へ。いつもあまり水の流れていない大井川だが、台風の影響で、水かさが増していた。

欄干や通路の新しいところは、去年の台風で壊れたところを治したもの。今年はどうやら大丈夫だったようだ。

橋の向こう側には道祖神。

熊手と箒を持っている意味がこれでわかった。長い橋の向こうには、いろいろ、めでたいものが待っている。

考えてみれば、人生は長い橋を渡るようなもので、渡り切った橋の向こうにはなにがあるのかと思うと、やっぱりおもしろいものやめでたいものがあってほしい。それでこんなふうにいろいろできたのかなあ。ちょっと作りすぎの感があるが。

ここ藤枝は、少し多めに走るだけで、海にも行けるし山にも行ける。買い物ついでにバラをみたり、橋を渡ったり、いろいろ見物できる。いいとこだなあと思いつつ帰ってきて、コーヒーを飲んで一服したあと、チビまる子のところへ向かった。

ちょうど坂道をのぼりかけるところにかぐわしい匂いが立ち込めている。銀木犀だ。金木犀はよくみるけれど、銀木犀はなかなかない。匂いは金木犀よりもやわらかいが、鼻孔の奥深くにまで届くような深さがある。思わず立ち止まって匂いに浸った。

バラの匂いもよかったが、これはもう秋の匂いそのもの。わあっと声をあげたくなるような、媚薬を嗅いでいるような、なんともいえない気持になる。私は匂いに敏感で、とくにこの匂いには弱い。

なかなか天気がよくならなくて、今日の猫たちは、ちょっと元気がなかった。

寒くなると、記念碑のところにいる赤トラ猫

丘の上でよく会うご夫婦の話を聞いて驚いた。台風の日、避難をしていたのだという。裏の崖が避難指定区域になっていて、避難指示が出たのだそうだ。今度の台風は無事に過ぎてくれたと思っていたが、すぐ近くでも、そんなことがあったのだ。

たしかにあの日の雨は、異常だった。空が壊れるというのは、ああいうことをいうのだろうか。大変なめにあっているのは人間だけではないだろう。飼われていた犬や猫たちはどうなったのだろうかと、気にかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

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