渡り蝶、アサギマダラ

掛川市の倉真温泉の旅館の庭にアサギマダラという蝶が飛来しているというので行ってみると、想像以上の数のアサギマダラが、フジバカマという花のまわりで飛び交っていた。

羽に文字が書いてあるのは、マーキングといって、飛距離を観測するためのもの。

群舞といっていいほどの数のアサギマダラが、フジバカマの花の上で盛んに飛んでいるのをみて、びっくり! たくさんの数の蝶が一斉に飛んでいるのをみるのは、初めてだ。アサギマダラのオスは、この花の蜜を吸って、性ホルモンをだすのだという。なるほど、それでこんなに集まっているのか。

透けるような薄い青色。その羽の浅葱色からアサギマダラという名前をつけられた。この蝶が有名なのは、渡りをするから。20度くらいの気温を好むこの蝶は、適温を探して、夏は北の方へ、冬は南下する。メスはオスと一緒に移動しながら、卵を葉に産みつける。

風に乗って移動し、一日に100キロも移動することもある。その距離、2000キロ以上にもなることも。遠く、台湾や香港にまで渡るものもあるというのだから驚く。

羽の裾に黒い斑紋があるのがオス

冬の間は暖かい南の島などで過ごし、あらたに繁殖した世代の蝶が春から初夏にかけて南から北上する。そして、八ヶ岳や東北、北海道の高地などで世代交代をしたアサギマダラは、秋になると、今度はまた一斉に南下を始める。となると、これは南下の途中だということ。

海を渡るとき、疲れると波の上で四つん這いになり、羽を休めるのだそうだ。この蝶は、羽化後4~5カ月で死ぬので、秋に南下するものと春に北上するものとは別の個体。世代をまたいで、どうして元の所へ戻れるのかはまだわかっていない。「蝶の道」があるのではないかと考えられている。

アサギマダラが渡り鳥のように海を渡って移動するということは、インターネットで調べて初めて知った。当日は、朝は曇っていたが、現地に着いたころには晴れてきて、日の光にに透けた浅葱色はとても美しかった。

「今日が今までで一番いいな。」と、隣りに立っている人が言った。3、4日前から毎日きているのだという。

この蝶の羽にも、マーキングがある。羽がかなり傷んでいる。

これほど美しい羽を持って生まれてきた蝶に、過酷な旅が待っているとは。そのことを知ると、いっそう、そのかぼそい羽の美しさがいとおしくなってくる。

現地に行くとき、近道である山道を選んだために、途中、ガードレールもない崖っ淵の道、車幅ぎりぎりの道でカーブを曲がるのは怖ろしかった。戻るスペースもなく、舗装されていない道の路肩から深い谷底に落ちそうだった。それでも、これから長い旅を続ける蝶たちに会えたことは、奇跡のようだった。

            《参考にした資料 インターネットから宮崎氏の記事》

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