魔法の言葉

これまであまりみかけなかった新顔猫。家のそばで出会った。白黒模様が大好きなので、つい、気にかかってそっとあとをついていくと、グレイの、よく庭にくる猫と遭遇。攻防が始まった。

こちらは、デビルみたいな顔をして睨んでいる。

しばらく二匹、にらみあっていたが、そのうちに、新顔は座り込み、ちょっくら休憩。     

そして、体まで舐め始める。そのあとは、ついに、グレイの猫がいる茂みへと入って行った。

夢中になって二匹をみているうちに、おっとこんなことをしている場合じゃないと気づき、急いで帰宅。うちのおじさんの心臓カテーテルの手術日だった。

今頃、おじさんは、こんな気持ちかなあ・・・。

それとも、心臓の島に住む鬼を退治する桃太郎の気分か。

とにかく車を飛ばして、病院へ。つくと、おじさんは、ちょうど手術室へと行くところ。ドラマのようにはいかなかったが、しばしの別れ。待つこと3時間。そこから絶対安静で8時間は寝返りもできず、背中が痛いと訴えるおじさんは、みていられないほど苦しそうだった。

だが、夕方になって巡回にきた医師は、「手術はうまくいったし、ぼくが特別の魔法をかけたから大丈夫!」と笑いながら言ってくださった。なんて、深い言葉だろうか。思わず、うるっときた。

魔法の言葉は、こんなふうに、100人力ならぬ、100頭力になった。ようやく、待ちかねていた夜の8時がきて、ついに寝返りができるようになったおじさんは、術後、初めての食事をとった。担当のお医者さんだけでなく、看護師さんたちもとても親切なので、安心して病室を出ることができた。

走り慣れない夜のバイパスには、猛スピードの車ばかり。80キロか90キロ平均で走ると、一瞬も気を抜けない。家に着いたときは、10時近くだった。

ぼくが魔法をかけたから、大丈夫。何度もその言葉をかみしめながら布団に入った。あんまり眠れんかったけど、ほんま、魔法の言葉やなあ・・・。

気にかかっていたチビまる子の世話は、引き受けてくれる人がみつからず、困っていたところ、ときどき午前中に行ってくれている男の方が意外にも快く引き受けてくれて、そちらも一安心。いろいろと大変だったが、人の温かさに触れられて、なんと、実りの多い2日間だったことだろう。

お医者さんの魔法が効いたのか、おじさんも順調に回復しているようだから、あしたは丘の上に行けそうだ。3日ぶりになるが、ちびまる子はどんな顔をするだろうか。まさか、おたく、どなたはんどすか、なんてことはないだろうけれど、ちょっと不安だ。