Healing Light

心を灯すHealingLight」というテーマのガラス細工展が、華蔵という茶房の二階で開かれていた。蓮華寺池公園のすぐ近くなので、行ってみると、暗くした部屋に、点々と小さな明りが並んでいて、ほんとうに、ぽっと心に灯がともるような気がした。

作者は杉本弘美さん。縄文遺跡の近く、富士宮の大鹿窪に工房を持っている。ヒーリングライトを作ろうと思ったきっかけは、東北大震災をみたことだったという。たしかに、じっとみつめていると、心が現実の世界から離れ、浮遊するのを感じる。

猫のグラスやキティちゃんまで、領域が広い。杉本さんはご自分の作品が並ぶ片隅で、新しい作品に使うガラスを切っていた。話してみると、作品のようにとても温かみを感じる人だった。

華蔵という茶房は、蓮華寺池公園に行く途中の路地を入ったところにあり、心惹かれる風情が漂う店だ。大阪から藤枝にきたばかりの頃、知らない道を歩くのが好きで、あちこち歩き回っているときにふらりと入ったことがある。外からみても風情があるが、中はもっと趣向が凝らされていて心地よかったのを覚えている。

蔵というと暗いイメージがあるが、小窓にステンドグラスをはめこみ、季節ごとに趣向を凝らしているようで、おちついた中にも華やかさがある。今日も、古代箪笥の上にかわいい雛が飾ってあった。

偶然に通りかかり、初めて入った時にも、とてもセンスがいい店だなあと思ったものだ。カウンターの中の棚にまで神経が行き届いている。さまざまな種類のコーヒーの瓶にまで。そのころよりも今はずいぶん客がふえているようだ。きっとほかにはない雰囲気が、リピーターを呼ぶのだろう。

大好きな抹茶ラテと抹茶ケーキを頂いたあとは、二階へ。階段の前には、メダカが泳ぐ水槽があって、メダカといってもただのメダカではなく、なにやらこの店のマダムのようにとても優雅。見入ってしまった。

そして、わくわくしながら二階へと上ると、暗闇に浮かぶ小さな明りが眼に飛び込んでくる。

心を灯す明りたちだ。

ここのところいろいろあって、すっかりくたびれていたが、仄かにゆらぐ明りに癒されてくる。

震災後の暗闇のなかで、蝋燭の炎は人々の心にも明りをともしただろう。水面に投げた小石の波紋がしだいに大きな輪になっていくように、東北大震災をきっかけに作りはじめたという杉本さんの気持は、きっと伝わっているんだと思う。

 

 

 

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